SheltiePedigree シェルティルーツ探索

Kazamidori 健幸塾「風見どり」









ESSIAC(エイジアック)、あまり聞きなれない名前ですがみなさんご存じでしょうか?
ESSIAC とは、癌の民間治療薬として昔からカナダに住む人々に服用されている ハーブ・ティーで、もともとはカナダのオンタリオ州に住んでいた先住民族であるカナダ・インディアン 「オジブワ族」のメディスンマンが、病気の治療に用いていた薬草茶です。
1924年、オンタリオ州にあるシスター・オブ・プロビデンス病院の看護婦リーン・ケイス によって、初めて病院という医療のフィールドで、このインディアンの薬草茶が 末期の癌患者に投与されました。
これがハーブ・ティー「 ESSIAC 」の幕開けです。 そしてこの患者さんの癌は、末期であるにも関わらずその後数ヵ月で消失し、完全に治癒したのでした。 以来、 ESSIAC は癌患者さんに次々と投与され、治癒効果・改善効果が高く、 しかも副作用の心配もほとんどないことが確認されたことから、 ESSIAC によって癌から生還した多くの人々や、 ESSIAC で癌の治療を受けたい人々の後押しを受けて、 多くの医師たちが ESSIAC を医薬品にしようと、 半世紀以上にわたって幾度となく国に医薬品の申請を試みました。
しかしその都度、安価で効果の高い ESSIAC を医薬品として承認されると不利益を被る勢力や、 権威を重んじる医師の執拗な妨害に遭い、押し潰されてきました。

ESSIAC とは、こんな歴史を持つカナダのハーブ・ティーです。

第1話は Sheltie Pacesetter 1996年1〜2月号に掲載されていた ESSIAC に関する記事を翻訳(内容を一部省略または表現を変えています)してご紹介します。

ESSIAC : Nature's Gift of Life   by Robert M. Stanley

1年前、私達のマスコットであるシェルティ Scotty Lucky Arrow が致命的な皮膚ガンの一種である「 悪性黒色肉腫 」と診断されました。
Scotty は5才の時、口の周りに小さなできものができ始め、 Scotty の獣医師 Dr. Steinam は「 これは良性の腫瘍である 」と考えていたようです。 そして、手術によりこの腫瘍を取り去り Scotty は早々と我家に帰って来ました。
検査部門からこの腫瘍の検査結果を受け取るまでは、全て順調に進んでいるように思っていましたが Dr. Steinam は私達に電話でこう伝えてきました「 Scotty の腫瘍は悪性で末期の状態です。残念ですが後2ヶ月〜半年の命でしょう! 」そしてガンの進行を抑えるため、下顎とリンパ線を取り除く手術を進められました。 また、合わせて高価ではあるが週1回のインターフェロンなど最新の免疫薬や抗ガン剤の投与を進められました。 ただし、「 過去の事例から考えて、これらにより Scotty の寿命を1年程先に延ばしてやれるぐらいでしょう! 」と話されました。 この話しを聞き、私達はとても落ち込んでしまいました。 そして費用等を含め、手術や投薬の副作用の事などを考えると更に落ち込んでしまいました。
しばらく考えた結果、私達は Scotty が余命をできるだけ楽な状態で過ごせるよう、手術や抗ガン剤等の投与を行わないことに決めました。
翌日、親友の Shawna から電話があり最近の出来事や Scotty の今の状態やガンのことについて話しました。 しばらくは涙があふれて止めることができませんでした。
興奮状態であった私の話しが途切れると、 Shawna は素早く完璧に私のジレンマに対する答えを出してくれました。
それは「 癌患者が薬草の液体によって信じられない結果を得た 」という話しでした。 もし、この話しが本当ならどんなに良いことか!私は Shwana に尋ねました!
ねえ!その液体は何処で手に入れられるの?
Shawna は答えました「 この奇跡の万能薬は何処のお店に行っても手に入らないのよ!、 でもラッキーなことに友人から貰ったのが1本だけあるのよ! 」、 しかしながら、私は Shawna がいつも強気な性格であること知っていました。 また Shawna がこの万能薬について、その原料や効能、副作用など何も知らず、その呼び名さえ知らないことをわかっていました。 私は、この万能薬について詳細がわかるまでは「 Scotty に投与しないでおこう 」と決意しました。
翌日、私は看護士である友人の Miles に電話で「 この薬草の液体って何なの?この薬草の液体がガンに効くって本当? 」と聞いてみました。
Miles はこう話しました「 あ〜知ってるよ! Essiac っていうんだ!まだ正式に認可されていないガンの治療薬で、欲しければ探してきてあげるよ!
そして、まさに次の日「 1993年発行の Nexus magazine 」が届き驚きました。 偶然にも、この雑誌の中に「 Essiac:ガンの自然治癒 」というタイトルの記事が載っていたのです。 その記事には Essiac を開発したカナダ人の看護婦 Rene Caisse について書かれた本「 Calling of an Angel」の著者である Dr. Gray L. Glimn 氏のインタビューがあり、 Essiac を構成する薬草の一つ「 インディアン・ダイオウ 」が37種類の肉種に対して効能が動物実験で証明されたことが書かれていました。 また、その後 Essiac が注目され偽物が多く出回り、純粋で高品質の Essiac を入手することが困難なことも書かれていました。
そしてこの記事を全て読み終え、Shawna がくれた1本の薬草の液体が Essiac であることを確信し、 少量を日に2回 Scotty に針の付いていない注射器で飲ませ始め、 3週間を目処に飲ませる量を少しづつ増やして行き、 最終的には1本のボトルを約3ヶ月で飲ませるようにしました。
Dr. Steinam が Scotty を「 末期ガン 」と診断してから 11 ヶ月が経ち、彼の診療所へ Scotty を連れて行きました。 すると Dr. Steinam は「 おい! Scotty の幽霊じゃないのか? 」っと驚いてショックを受けた様子でした。 Dr. Steinam は最初に Scotty を診察した時から、彼をとても可愛がってくれていて Scotty がまだ生きていることをすごく喜んでくれました。
先日 Scotty の腫瘍を検査してくれた病理学者達と話しをしていたそうです「 Scotty はもうあの世へ行ってしまったのだろうな〜 」っと... Dr. Steinam に Essiac について色々と説明をしたところ「 そんなに効目があるのか! 」と驚いていました。
Scotty はチャンピオンであった父の良い血統受け継いでいます。 そのことを彼は証明してくれました。 そう Scotty はその後に 8 頭の健康な仔犬の父になったのです、、、
Scotty について、色々とご相談いただいた医療関係者の皆様にお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。
そして最後に、病気で苦しんでいる愛犬をお持ちの方々へ私から一言!

決してあきらめないでください、きっと道は開けます!

上の写真は ESSIAC の助けにより末期ガンから生還したスコッティ君です


※ESSICについて詳しくお知りになりたい方は以下のWebサイトを参考にしてください。


今回は「犬の詩」として有名な 「The Last Battle」、「To My Beloved Master」、「Rainbow Bridge」を翻訳してみました。

〜最後の戦い〜

老い果ててゆくことが定だとしたら、
痛みが眠りへの道を閉ざしているのだとしたら、
勝つことのできないこの「最後の戦い」の時、最善を尽くしてください。

あなたが悲しむことはわかっています。
でも悲しまないで、あなたの手を私から離さないでください。
愛と友情の試練は、あなたと過ごした多くの日々よりもこの日のためにあったのでしょうか!

あなたと過ごした数々の幸せな日々、もう何も恐れるものはありません。
あなたは私に辛い思いをさせたくないと思ってくれていますね!
でもその時が来たのなら、どうか私を行かせてください。

私が向かうべき所へ連れていってください。
そして最期まで私の傍に居てください。
私の目が見えなくなるまで強く抱きしめて話しをしてください、、、

とうとうその時がやって来たようです。
あなたのやさしさを感じています。
あなたのやさしさに応えたいけれど、最後に尾を一振りすることしかもうできません。
私の思いを伝えたくて、痛みと苦しみの中この最後の一振りのために力を残していました。

私達はいつも一緒に居ましたね!
どうか私が去りゆくことを悲しまないでください。
どうかあなたの心に涙を流させないでください。

どうか微笑んでください。
私達が伴に歩んだひとときを思い出して、、、


〜The Last Battle〜

If it should be that I grow frail and weak,
And pain should keep me from my sleep,
then you must do what must be done
For this, the last battle, can't be won.

You will be sad, I understand,
Don't let the grief then stay your hand,
For this day more than all the rest
Your love and friendship stand the test.

We've had so many happy years,
What is to come can hold no fears.
You'd not want me to suffer so;
When the time comes, please let me go.

Take me where my needs they'll tend
And stay with me, if you can, to the end.
Hold me firm and speak to me
Until my eyes no longer see.

I know in time, you will see,
It is a kindness you do for me.
Although my tail its last was waved,
From pain and suffering I've been saved.

Don't grieve that it should be you,
Who must decide this thing to do,
We've been so close, we two, these years;
Don't let your heart hold any tears.

Smile, for we walked together for a little while.



〜最愛なるご主人様へ〜

昨日の夜、私はあなたのベッドの傍に立って居ました。
あなたのことを一目見たくて!
あなたが泣いているのがわかりました。
なかなか眠れなかったのすね!

あなたが涙を拭っていたので、私はそっと「クンクン」と鼻を鳴らしました。
「僕だよ、僕はあなたを置いて行ったりしていないよ!」
「僕は大丈夫、元気だよ!」
「ほら、僕はここに居るよ!」

朝食の時、私はあなたのすぐ傍に居ました。
あなたがお茶を注いでいるのが見えました。
何度も物思いにふけっていましたね!
そして、あなたの手がふと私に触れるのを感じました。

今日あなたが家路へと向かう時、私も一緒に居ました。
お家のカギを探していましたね!
私はそっとあなたに手を掛け「僕だよ!」って微笑みながら言いました。

今日お墓参りの時、あなたと一緒に居ました。
お墓の手入れをしてくれていましたね!
でも「僕はもうそこにいないよ!」とあなたを安心させてあげたかったのですが、、、

今晩はとても疲れているようですね!
椅子に深く沈みこんでいましたね!
あなたの傍に立っていることを一所懸命伝えようとしたのですが、、、

あなたは静かに座り、そして微笑んでいましたね!
夕刻の静寂の中、私があなたのすぐ傍に居ることに気付いてくれたのですね、、、

短い別れの時を終え、あなたにもその時がやってきたのなら
私は急いで迎えに行きます。
そして私達は再び寄り添い合うでしょう。

あなたに見せたいものがたくさんあります。
そう、とてもたくさんあります。
もう少しだけ待っていてください。
あなたが人生の旅路を終えた時、私達はまた出会えるのですから、、、


〜To My Belobved Master〜

I stood by your bed last night, I came to have a peep.
I could see that you were crying, you found it hard to sleep.

I whined to you softly as you brushed away a tear,
"It's me", I haven't left you, I'm well, I'm fine, I'm here.

I was close to you at breakfast, I watched you pour your tea,
You were thinking of the many times, your hands reached down to me.

I walked with you towards the house, as you fumbled for the key.
I gently put my paw on you, I smiled and said "it's me".

I was with you at my grave today, you tend to it with such care.
I want to reassure you, that I am not lying there.

Tonight you looked so very tired, you sank into a chair.
I tried so hard to let you know, that I was standing there.

You sat there very quietly, then smiled, I think you knew...
in the stillness of the evening, I was very close to you.

And when the time is right for you to cross the brief divide.
I'll rush across to meet you and we'll stand side by side.

I have so many things to show you, there is so much for you to see.
Be patient, live your journey out... then come home to be with me.



〜虹の橋〜

天国のすぐ手前に「虹の橋」と呼ばれる所があります。

生前誰かにとても愛された動物達が、死後「虹の橋」へと旅立って行きます。
そこには広々とした草原と丘があり、仲間達はみな一緒に走り回ったりして遊んでいます。
たくさんの食ベ物と水もあり、暖かな日だまりの中、誰もが心地好く暮らしています。

生前病気にかかっていたり老いていた者は健康と活力を取り戻し、
傷を負っていた者は傷が消え、ふたたび健康な体を得ます。
まるで夢に見た「過ぎ去りし日々のあの頃」の姿です。
みんな幸せに満ち溢れています。
ある一つのことを除けば、、、
そう、とても大切なあなたを残して旅立って来てしまったことを寂しく思い、あなたのことが恋しいのです。

仲間達と一緒に遊んでいると、突然立ち止まり遠くの一点だけを見つめる者がいます。
そう、その時がやってきたのです。
一心になって見つめる瞳は輝き、その体は喜びに打ち震えます。
あなたを見つけたのです。
仲間から離れひとり駆け出し、草むらを飛び越えまっしぐら、駆けるスピードはどんどん増していきます、、、

そしてあなたを見つけ出し、ついにふたりは出会うことができました。
再び固い絆で結ばれ、もう決して離れることはありません。
あなたの顔は祝福のキスでびちゃびちゃです。
あなたは愛しい子の頭をなで、あなたへ向ける信頼のまなざしの瞳を再び見つめます。
ずいぶん長く離れて暮らしていましたが、決してあなたの心の中からは離れることはなかったのです。

そして今、伴に「虹の橋」を越えるのです。


〜Rainbow Bridge〜

Just this side of heaven is a place called Rainbow Bridge.

When an animal dies that has been especially close to someone here, that pet goes to Rainbow Bridge.
There are meadows and hills for all of our special friends so they can run and play together.
There is plenty of food, water and sunshine, and our friends are warm and comfortable.

All the animals who had been ill and old are restored to health and vigor; those who were hurt or maimed are made whole and strong again, just as we remember them in our dreams of days and times gone by.
The animals are happy and content, except for one small thing; they each miss someone very special to them, who had to be left behind.

They all run and play together, but the day comes when one suddenly stops and looks into the distance.
His bright eyes are intent; His eager body quivers.
Suddenly he begins to run from the group, flying over the green grass, his legs carrying him faster and faster.

You have been spotted, and when you and your special friend finally meet, you cling together in joyous reunion, never to be parted again.
The happy kisses rain upon your face; your hands again cares the beloved head, and you look once more into the trusting eyes of your pet, so long gone from your life but never absent from your heart.

Then you cross Rainbow Bridge together....



今回は Sheltie Pacesetter 2008 年春号に掲載されていました「Cheyenne」をご紹介します。 年老いた父に「心の平和」を取り戻させてくれた「シャイアン」君のお話しです。

〜 Cheyenn 〜
by Catherine Moore

「おい、気を付けろ! 隣の車にぶつかるぞ!」と父は叫びました。
「ちゃんと運転できないのか? お前は!」
ひどい叱咤に、私は助手席に座る年老いた父の方を向き、言い返そうと喉元まで言葉が出て来ていましたが、気を静めました。
「車は見えていたわよ、父さん! 運転している時は怒鳴らないで下さい 」
私も怒鳴ってやりたかったのですが、冷静にやさしく語りました。 父はしばらく私をにらみつけ、落ち着いたようです。 家に着き、父をテレビの前へ連れて行き、私は外へ出て思案していました。雨を呼ぶ暗く重い雲、遠くとどろく雷は私の心の中で繰り返し鳴り響いていました。

父の事、どうすればいいのだろう、、、

父はワシントン、オレゴンで木こりをしていました。アウトドアライフを存分に楽しみ、木こりの「力だめし大会」に出場してはよく入賞していました。 棚一杯のトロフィーは父の実力を証明していました。しかしある大きな大会で父は丸太を持ち上げることができず、そのことを冗談で笑い飛ばしていました。 その日、父がその丸太を持ち上げようと一人庭で苦闘している姿を見ました。自分より若い連中がその丸太を持ち上げ、彼らに「年には勝てないね!」と茶かされた事に苛立っていました。

父が67歳の誕生日を迎えた4日後のこと、父は心臓発作を起し救急車で病院へ向かい、すぐさま手術室へと運ばれました。そして幸運にも一命を取り留めたのでした。 しかし、父の中で何かが死んでいました。父の人生への熱意は消え去っていたのです。 父はドクターの指示に従わず、頑固に様々な提案を拒否し続けました。 父を訪ねる者は減り、遂には誰も来なくなり一人孤独になってしまいました。

私と主人のディックは「私達の小さな農場に来て一緒に暮しましょう」と父にお願いしました。 「田舎の新鮮な空気と景色が父には良いかもしれない」と私達は考えたのでした。 父が我家にやって来て1週間も経たない内に「父をここに連れて来たことを」私は後悔しました。 父は私が成す全てのことに否定的で、何一つ満足することはないようです。 私は苛立ち憂鬱になり、主人のディックにあたってしまいました。

危機感を抱いたディックは牧師に相談してみようと思い、カウンセリングの日取りを行いました。 カウンセリングの途中、牧師は父の心が癒されるよう幾度も祈りを捧げてくれました。 しかし1ヶ月が過ぎても、神様は沈黙したままでした。

雨は私の頬を打ち、神様は何処にいるのかと曇り空を見つめました。 この宇宙は神様により創造されたのでしょうが、この地球にいるちっぽけな一人の人間を助けてくれるのだろうかと疑わずにはいられませんでした。 もう、神様の応えを待つのに疲れてしまい、私自身が何とかしないといけないと思い、翌日電話帳を手に電話の前に座り込み、イエロページに載っている心療クリニックへ電話をかけまくりました。
私は必死になって父のことを話しましたが、どのクリニックからも同情してくれるだけで何の手立てもありませんでした。 もう諦めようかとしていたところ「あなたのお父様の助けになるかも知れない記事を読んだことがあるわ!、取って来るからちょっと待ってて!」と応えてくれる人がいました。 電話越しに彼女の読んでくれた記事を注意深く聞き入りました。 それは「慢性うつ病患者に継続して犬の世話をさせたところ、全ての患者に改善が見られた」というものでした。

その午後、早速私は動物愛護センターへ車を走らせました。 アンケートを書き終えると係りの人が犬舎へと案内してくれました。 檻の列へと足を運ぶと消毒の臭いが鼻をつきました。
各檻には5頭から7頭入っていて、毛の長い犬、毛が巻いた犬、黒い犬、ブチの入った犬など様々です。 彼らは皆、檻の外の私に飛びつこうとしました。 彼らを念入りにチェックしましたが、大きすぎる、小さすぎる、毛が多すぎる等の理由から選ぶことができませんでした。

そして最後の檻へとさしかかった時、奥角の陰にいた1頭のワンちゃんが慌てて足を空回りさせ、私の傍に走り寄って来て私の前に礼儀正しく座りました。 それは世界的に貴族犬として知られる「ポインター」でしたが、 彼の姿は滑稽で、歳と伴にマズルはグレーに古ぼけ、腰骨は片方に突起していました。 それでも彼の目は私の心を捉えました。
私は彼を指差し「彼について話し手貰えませんか?」と尋ねました。 係りの人はそのポインターに目を向けて、当惑した感じで首を振りこう話しました。
「それが不思議で何処からともなくやって来て、このセンターの門の前でじっと座っていました。 誰からか迷子の届け出があるだろうと仕方なく中へ入れました。 あれからもう2週間が経ちますが誰からも届け出がありません。明日で時間切れです」 とやり切れない表情でしたが「もしかして?」っと心配になり係りの人に尋ねました。
「えっ!それって明日彼は殺されてしまうということですか?」
「奥さん」っと係りの人は静かに答えました。
「規則なので仕方ないです。届け出がない全てのワンちゃんを置いておく場所がないのです。」

私はもう一度そのポインターに目を向けました。彼の穏やかな茶色い目は私の決断を待っていました。
そして「彼を連れて帰るわ!」っと私は叫びました。
私は彼を助手席に座らせ連れ帰りました。
自宅に到着し、ベルを2回鳴らしました。 父へのご褒美「ポインター」を車から出そうとしていると、父がすり足で玄関先まで出て来ました。
「父さん見て!父さんのよ!」っと興奮ぎみに私は話しました。 父はその「ポインター」を見て眉間にしわを寄せこう言いました。
「犬が欲しけりゃ自分で見つけてくるさ!そんな骨の曲がったへんてこなのよりず〜っとイイやつをな!お前が世話をしろ!俺はいらない!」
父は軽蔑の眼差しで家の中へ戻ろうとしました。
私は腹が立ちこう言いました「父さん、彼と仲良くした方がいいわよ!彼はずっとここにいるわ!」 父は私の言葉を無視しました。
私の怒りは頂点に達っし叫びました
「おいそこの年寄り、聞こえているのか?」
その言葉に父も腹を立て、腰に手をあて私をにらみつけました。
私達がにらみ合っていると、ポインターが私の手からリードを引き抜き、恐る恐る父の所へ歩み寄り父の前に座りました。 そしてゆっくりと注意深く前足を上げました。 ポインターが前足を上げようとした時、父の下顎は震え困惑している様子でしたがポインターは静かにじっと待ちました。 そして父はひざまずき、ポインターと抱き合い、それは父とポインターとの温かな友情の始まりでした。

父はそのポインターをシャイアンと名付けました。
彼らはお互いの信頼を深め、田舎道を何時間も一緒に歩きました。 時にはニジマスを釣りに川へ出かけて何時間も帰ってきませんでした。 教会の日曜礼拝の時でさえ、礼拝席に座った父の足元にシャイアンは体を横たえ終わるまでじっと待っていました。
シャイアンがやってきてから3年間、父とシャイアンは離れることはありませんでした。 父の頑固さは薄れ、シャイアンはたくさんの人達に親しまれました。

ある夜中のこと、シャイアンの冷たい鼻が私達の布団をつつくのを感じました。 夜中にシャイアンが私達の寝室にやってきたことは今まで一度もありません。 私はディックを起し、ローブを羽織り父の部屋へと急ぎました。
父は安らかに眠っていましたが、魂は既にあの世へと旅立っていました。

その2日後、私の悲しみはさらに深いものとなりました。
シャイアンが父のベッドの傍で横たわり死んでいたのです。
シャイアンのお気に入りのボロ布を彼の身体に巻き、ディックと私は父とシャイアンが大好きだった釣り場の近くに彼を埋めてやりました。
年老いた父に「心の平和」を取り戻させてくれたシャイアンに、私は感謝の気持ちを贈りました。

父の葬儀の日の朝は暗く雲っていました。
そして葬儀には私達家族のみが参列するのだろうと思っていました。
しかし、教会には父とシャイアンの友達でいっぱいで驚いてしまいました。 牧師は賛辞を始めました。それは父と父の人生を変えたシャイアンに捧げるものでした。

今思うとあの一つの記事に出会えたことが良かったのでしょう。
そして現れるはずのない場所へやって来たシャイアン!
彼の穏やかな私へのまなざし、父へ献身的であったこと、そしてほぼ同じ時期に父とシャイアンが亡くなったこと!
全てが過ぎ去りやっと気がつきました。
そう神様が私の祈りに応えてくれていたということに 、、、


〜 This is Heaven 〜
Retold by Sissy Harrington-McGill

昔々、老人とその愛犬がこの世を去り、彼らは天国への旅路へと向かいました。
その途中、美しい大きな屋敷があり、そこには「 ここが天国 」という看板が掲げてありました。
老人は門に近寄り、門番の所で止まりました。
そして中へ入ろうとした時、門番は彼らを止めてこう言いました。
 「ここへは犬を連れて入れません!」
老人は諦めて引き返しました。

そして元の道を歩いていると、すぐに新たな屋敷がありました。
この屋敷には「 天国 」と書かれた看板がありました。
老人と愛犬テディは門番の所へ行きこう尋ねました。
 「屋敷の中へ入りたいのですが、テディーも一緒に入れていただきたいのです」
すると門番はこう答えました。
 「ええ、ワンちゃんはいつでも大歓迎です!」
老人は首をかしげ、困惑した様子でした。
 「え〜、すみません!良くわからないのですが、ここは”天国”って印してありますよね?じゃ〜下の方にあった屋敷は何ですか?」
門番は眉をひそめてこう答えました。
 「あれは"”地獄”ですが、、、」





ロサンゼルスからハイウェイ101に乗り、北へ150km走るとサンタバーバラという海岸の美しい街に到着します。 そのサンタバーバラ市街ホームレスの男性と犬、猫そしてねずみが仲良く家族として暮らしています。 その家族の前を行き通う人々の顔からは自然と笑みがこぼれます。

動画をご覧になりたい方は画像をクリックしてください。





今年の2月に書きかけていたドッグストーリー「母からの贈り物」が、ようやく完成しました。

SheltieChristmas!

ジェニーは、世界で一番美しい犬ではありませんでした。
彼女の耳はショードッグのように凛々しく立つことはなく、尻尾は若干高い位置にあり、ブリーダー泣かせの容姿でした。
しかし彼女の目は美しく、彼女自身の心を映し出しているかのようでした。

山あいの、水と緑の豊かな里でジェニーは育ちました。
早朝、森は朝焼けの太陽を受け、辺り一面に朝霧が立ちこめます。
夜には満天の星がジェニーの魂を揺さぶり、そして月に向かって放たれた彼女の遠吠が谷間にこだまします。
彼女の愛する少年と共に、それは最高の暮らしでした。

少年とジェニーは丘の上の草原で遊ぶのが大好きでした。
毎朝、丘の上まで競争です。
少年は生まれつきの心臓病で早く走ることができませんでしたが、ジェニーは少年の周りをクルクルと回りながら丘まで辿りつきます。
少年の足はもうパンパンで、息もあがりふらふらです。
丘へ着くと、笑いながら草むらに倒れこみ、天を仰ぎ、喘いで新鮮な空気をお腹一杯吸い込みました。
少年とジェニー・・・心自由な彼らは、その里でたくさんの夢を抱いていました。

ジェニーには、少年の靴がボロボロになっているのが、わかりませんでした。
少年の服が継ぎはぎだらけなのも、わかりませんでした。
食事の量が少なく少年が痩せこけているのも、もちろんわかりませんでした。
ジェニーにわかっていたのは、少年の優しい声、少年の情熱、少年の温かい手のぬくもり、そして少年が自分のことを愛してくれているということだけでした。
もちろん、ジェニーも世界中の誰よりも少年のことを愛していました。

この日もいつもと変わぬ一日が始まりました。
カップの底に注がれた、ほんの少しのココアとトースト、それがいつもの朝食です。

あっという間に平らげると、少年は歯のまわりに付いたトーストの残りかすを舐めまわし

「父さん、ごちそうさま!」
「お代わりある?」

そう父に尋ねました。

父は、使い古したカップに注いだお湯をひとすすりすると、ため息をつき窓の外の遠い山に目をやりました。
母さんからの贈り物だった父のカップは、かつて、とても美しかったのですが、今ではヒビが入り色あせています。

お代わりなどあるはずがないことを、父も少年もわかっていました。
少年は心の中で、お母さんが生きていた頃のことを思い出していました。

ジャムの載ったトーストにベーコンエッグ、たっぷりのバターに浸したふんわりポテト!
キッチンからはシナモンロールにパイが焼ける香りがしてきます。
キッチンをちらちら覗くのは、それは楽しいものでした。
母さんが微笑み、父さんはジョークを飛ばし、家中に笑い声がこだましていました・・・

「いいよ、父さん!」

少年はそう言うと、椅子を引いて壁に掛けてある帽子のところへと向かいました。
その椅子を引く音を聞いて、しわくちゃの毛布の上で休んでいたジェニーが立ち上がりました。

「今日はどこへ行くのだろう?」
「丘の上に登った後は、川のほとりへも行くのかな?」
「川原の石を拾い、冷たい川面にその石を放り滑らして遊ぶのかな?」
「今日も大笑いするのかな?」

ジェニーは少年が笑うのを見るのが大好きでした。

この日は少し天気が悪く、丘へ登る頃、小雨が降ってきました。
ジェニーと少年は慌てて家に戻りました。
するとテーブルの上に手紙が置いてありました。

「山の雪も溶けたようだ!」
「父さんは山に行ってみようと思う!」
「山へ行けば炭坑の仕事が貰えるかもしれない!」
「ここからは遠く離れた所なので、すぐには帰ってこれないが、弟のトニーとジェニー、そしてお家を頼む!」

父は炭鉱のある山へと仕事を探しに旅立ったようです。
少年は「父さんが帰って来るまで、お家を守らないと!」、そう心に言い聞かせて気を引き締めました。

少年とジェニーは、弟のトニーを気遣いながらお家を守りました。
父が旅立ってから3ヶ月が経ちましたが、父からは何の連絡もありません!
やがて、谷間に爽やかなそよ風が吹き、里は初夏を迎えました。
痩せた畑からは、ジャガイモとトウモロコシをほんの少し収穫することができました。
収穫は、トニーと少年、そしてジェニーも手伝い、丸一日かかりました。
ジャガイモは地下の倉庫に保管し、トウモロコシは乾燥させ、軒下に吊るしておきます。
これでしばらくの間、食事の心配はなさそうです。

ジェニーと少年は、相変わらず丘の上の草原まで毎朝競争です。
早朝の草原に吹く夏風は、とても爽やかでした。
時には弟のトニーもこの競争に加わり、少年達はいつもと変わらぬ楽しい毎日を過ごしました。

やがて、暑い夏も過ぎ、木々は色づき、秋を迎えました。
倉庫の食料は、もう底をつきそうです。
幸い山や森に行けば、キノコや木の実があります。
しかし、今年は夏が猛烈に暑かったせいか、木の実がほとんど見つかりません。
森の鳥やリス達が食べてしまったようです。

動物達は、食べ物を蓄えるために慌しく野山を駆け巡り、山や森もその姿を黄金色へと駆け足で変えていきました。

そして数週間後、秋も深まり里には谷間から北よりの冷たい風が吹き込むようになりました。
もう森には食べ物はありません。
森の動物達も冬仕度を済ませたようで、ほとんど姿が見えません。
少年は、もう3日も何も食べていません。
ジェニーも1週間、何も食べていません。
とうとう、幼い弟のトニーに食べさせるトウモロコシの粉で作ったパンもなくなってしまいました。
少年はゆっくり腰を下ろすと膝を抱え、思案しはじめました・・・
そうして暫くすると、何か決心したかのように大きくうなずき、立ち上がりました。

「ジェニー、さあ行こう!」

少年は、そう声をかけると、ジェニーを連れて家を飛び出しました。
少年とジェニーは昔よく通った川沿いの道を歩きました。
かつて沢山の七面鳥でにぎわっていた養鶏場には、もう一羽の姿もなくひっそり息を潜めています。
赤く熟した果実をたわわに実らせていたリンゴ畑も、ブドウ畑も、今はもう雑草で生い茂っています。
ジェニーは、少年のいつもと違う様子に気付いていました。
やがて川沿いの坂道を上りつめ、炭焼き小屋を越えたところに大きなお屋敷が見えてきました。
手入れの行き届いたお庭に、風格のある門構えの邸宅です。
奥からは客人を迎えるがごとく、重く威厳のある犬達の吠える声が聞こえてきます。

「ジェニー!、いいかい・・・」

ジェニーは耳を立て、少年の言葉を聞き取ろうとしましたが、首をかしげました。
最後の言葉まで聞き取ることができなかったようです。

「ファーガソンさんがお家に居てくれるといいんだがな〜」

そう少年はつぶやき、門の前で止まりました。

「さあジェニー!、耳をちゃんと立てるんだ!」
「尻尾は立てちゃダメだよ!、僕の行ったことを忘れるんじゃないよ!」

少年はジェニーの耳元でそう囁きました。
少年は帽子を脱ぎ、髪を手ぐしで整えると、大きく重圧のある木製の門扉を叩きました。
すると扉の奥から足音が聞こえてきました。
ジェニーは言われたとおり耳を立て、尻尾を下げました。

「そうだジェニー!、いいぞ!、お前はとても美人だよ!」

少年はドキドキしながら待ちました。

「はい、何のご用でしょうか?」

お手伝いさんがドアを開けながら尋ねました。

「あの・・・、あの・・・」

「どうしました、おぼっちゃん!」

お手伝いさんは鼻先にかかった細い金縁メガネを指で持ち上げながら尋ねました。

少年の心臓は、もう口から飛び出しそうです。
少年はジェニーに触れ、勇気を振り絞って言いました。

「ファーガソンさんにお願いがあるのですが・・・」

「ファーガソンさんに何の用?」
「旦那様は子供の相手をする程お暇な方ではないのよ!」

「仕事の話なんです、おばさん!」

少年の膝はガタガタ震えていました。

「仕事の話だって?」

お手伝いさんはあざ笑いました。

「仕事ってどんなものか教えてあげましょうか?」
「今夜はケネルクラブのパーティーがここであるのよ!、その準備で私は忙しいの!」
「コーヒー豆をひいて、ローストビーフを焼かないといけないし、パンやケーキも焼かないといけないわ!、ファーガソンさんも同じよ、みんな忙しいの!、あなたみたいに突っ立って一日中話しているわけには行かないわ!」

「でもおばさん、僕はファーガソンさんと仕事の話がしたいんです・・・」

「どんな仕事の話か知らないけど、あなたがファーガソンさんと会うべきお方かどうか、その格好、その犬を見れば私にもわかるわ!、さあ早くお家へ帰りなさい!」

そう言って、お手伝いさんはドアを閉めようとしました。
その時、お手伝いさんの後ろから、低く優しい呼び声が聞こえました。

「ルーシー?」
「どうかしたのかい?」

「いえ、何でもありません!」
「お忙しい旦那様の大切な時間を無駄にしてまいそうな客人だったので、今追い払おうとしていたところです」

「ルーシー、僕なら時間はたっぷりあるよ!、そこを退いて私に任せなさい!」

そう言ってファーガソン氏はドアを大きく開きました。

ミスター・トーマス・A・ファーガソン!
著名なブリーダーであり、ケネルクラブの会長でもあります。

ファーガソン氏は、少年に近寄ると

「私に何か用があるようだね?」

そう話しかけました。
そして少年の横に犬がいることに気がつきました。

「おや、そこに居るのは私の犬舎の犬だね?」
「私の犬舎以外ではこのような犬は生まれていないはずだ!」

そう言って、ファーガーソン氏はジェニーを自分の横にやさしく引き寄せました。

「はい、そうですファーガソンさん、この仔、いやジェニーはあなたの犬舎からきました」
「この仔の名前はセイント・ジェニー・オブ・ファーガソンです・・・」

「父犬はチャンピオンなんです」


少年は誇らしげに、そう付け加えました。

「あ〜、そのようだ、間違いない!」
「グランド・チャンピオン犬のグレート・サンダー・オブ・ファーガソンの仔だね?」
「見ればわかるよ!」
「さあ、早く入った、入った!」

そう言って、少年とジェニーを応接間に通しました。

「ルーシー!、温かい飲み物とトーストを何枚か焼いて持ってきてくれないか?」
「そしてこのジェニーにはドライ・ビスケットを頼むよ・・・」

今夜のパーティーの準備に追われているルーシーは不満げな顔をしています。

「さあ、早く行った、ルーシー!」

そうして、しばらく経ってからファーガソン氏は少年に尋ねました。

「ジェニーは、どうやって君の所にやってきたのかな?」

「母からのプレゼントなんです!」

「プレゼント?、ほう、それはちょっと特別なプレゼントだね?」

「はい、誕生日プレゼントに母がくれました!」

「あ〜!」

ファーガソン氏はうなずくと、昨年の暮れに財布の中身を気にしながら、新聞の広告に載せた仔犬を買いに来た病弱なご婦人のことを思い出しました。

「君の誕生日にだね?」

少年は静かにうなずきました。

「そうか!、お母さんは元気かい?」

そうファーガソン氏は少年に尋ねました。

少年の表情は急に暗くなり、目を落とすと小さな声で答えました。

「母は・・・、母は今年の春を迎える前に病気で亡くなりました!」

「う〜ん、そうだったのかい、それは大変だったね・・・、じゃ〜お父さんは?」

「父は、春の雪解けの後、遠くの山の炭鉱へ仕事を探しに行ったまま戻ってきません!」

「う〜ん、それは心配だね!」

そこへ、ルーシーが頼まれた温かい飲み物にトースト、そしてジェニーにドライ・ビスケットを持ってきました。

「ありがとう、ルーシー!」

「さあ食べなさい、ダニー!」
「君の名はダニー・ローズウッドだね?」
「お母さんが君のことを、よくお手伝いをしてくれる子だと、誇らしげに話していたよ!」
「そして、君のお父さんの名前はレスター・ローズウッドだったね!」
「君のお父さんは世界一素晴らしいバイオリン職人だよ!」
「君のお父さんの作るバイオリンの音は、それは美しい音色だった!」
「きっとお父さんは、もうすぐ帰ってくるよ、ダニー!」

少年の目はキラキラと輝きだし、トーストとココアに手を伸ばしました。
そしてファーガソン氏は、少年の継ぎはぎだらけのシャツとズボン、そして破れた靴に目をやりながら尋ねました。

「ところで、君がここへ来たのは、そのジェニーを私に見せるためだったのかい?」

少年は手を止め、下を向いたまま答えました。

「はい、あの〜、あの〜・・・、ジェニーを買ってくれる所をご存じないでしょうか?」
「ジェニーは、とても大切に育ててきました!」
「でも今は食べるのにも困ってお金がいるのです・・・」
「父さんが帰ってくるまでは何とか頑張らないと・・・」
「今、僕の手元に残っているのはジェニーだけなんです・・・」

「親愛なるダニーよ・・・君はもっと素晴らしいものを持ている!」
「それは希望だ、お父さんがきっと帰ってくると信じているね!」
「それに君の献身的な心、普通その若さでは得られないものだ!」
「現にジェニーを素晴らしい成犬に育て上げてくれたね!」
「今夜のケネルクラブのパーティーでジェニーをクラブのみんなに紹介しよう!」

「旦那様、しかし・・・」

お手伝いのルーシーが口を挟もうとしましたが、ファーガソン氏はすかさずルーシーの方に身体を向け

「ルーシー、ココアとトーストのお代わりを持ってきてくれないかね!」

そう優しく微笑むとウィンクして、口止めしました。

ファーガソン氏は、もう一度少年の方を向き、こう続けました。

「今日は素晴らしい日だ!」
「私に幸運を持ってきてくれてありがとうダニー!」
「君のおかげだよ、こんな素晴らしい犬を手にできるとは・・・」

少年は悲しげな顔でジェニーに目をやり、再びファーガソンさんの顔を見てこういいました。

「ファーガソンさん、それは・・・それはファーガソンさんがジェニーを買いたいということですか?」

ファーガソン氏は財布に手をやりながら答えました。

「もちろんだとも!」
「こんな素晴らしい犬を見て、”欲しくない!”というブリーダーはいないだろう!」
「でも、困ったな〜!」
「もうすぐ大きなドッグショーがあって、私は長い間犬舎を空けなければならないんだ・・・」

「そうだ!、ダニー、お願いがあるのだが・・・」

「私のためにジェニーを君のお家で預かってくれないだろうか?」
「君の犬の管理は素晴らしい、そうして貰えれば助かるのだけれど・・・」
「それに、もうすぐ仔犬が生まれてくる!」
「よければ、ジェニーと一緒にここへ来て、仔犬の世話もしてもらえれば助かるんだが・・・」

少年は二つ返事で承諾しました。
ジェニーの代金と世話料を貰い、食べ残したトーストとドライ・ビスケットを紙袋に詰め、大喜びで弟トニーの待つ我が家へと走って帰りました。
もちろん、ジェニーも一緒です。

それから一月が経ち、生まれてきた仔犬もだいぶ大きく育ちました。
この日はクリスマス・イヴだったので、仔犬に餌を与え終わると犬舎を離れ、家路へと急ぎました。
もう辺りは暗くなりかかっていましたが、川沿いの帰り道を下りきった所にある大きな樫の木の下で、ジェニーと少年は腰を下ろし一休みしました。
ちょうど、その樫の木の向こうに大きな煙突のあるお家が見えます。
煙突からは白い煙が昇っているのが見えます。
湯気で少し曇った窓の向こう側にお母さんと子供達の姿が見えます。
暖炉の横には、大きなクリスマス・ツリーも見えます。
七面鳥とパイを焼いているのでしょうか?
とても香ばしい美味しそうな匂いがしてきます。
そして、子供達とお母さんの笑い声が家の中から聞こえてきました。

少年は、凍えた両手に息を吹きかけながら、自分のお母さんが生きていた頃のことを思い出していました。
クリスマスには、家族みんな揃って食事をしました。
ローストビーフにロブスター、フライドポテトに温かいシチュー、テーブルには色々なご馳走が並びました。
食後には、大きなイチゴの載ったクリスマス・ケーキも食べました。
色とりどりに飾り付けられたツリーの下には、クリスマスプレゼントが置いてあり、暖炉の前でプレゼントを開けるのがとても楽しみでした。

そして暖炉を囲み、父さんの弾くギターに合わせて讃美歌 「 What A Freind We Have in Jesus(慈しみ深き)! 」を皆で歌いました。
家中、歌声と笑い声が絶えることはありませんでした。
そして、父さんのバイオリンをバックに母さんがピアノで奏でる 「 ダニー・ボーイ」を聞きながら、暖炉の前でいつの間にか眠ってしまうのでした・・・

少年の目から一粒の涙がこぼれ、それに応えるかのように夜空の一番星がキラリと光り輝きました。
その様子は、星になったお母さんが少年を見守っているかのようです。

ジェニーは涙を流す少年の姿を見て、後ろ足で立ち上がり少年の肩に前足を架け、少年の涙をひと舐すると、クンクンと泣きました。
少年はジェニーを強く抱きしめました。
するとジェニーは少年の顔を、涙が乾くまで幾度も幾度も舐め続けました。

「僕にはジェニーがいるんだね!、弟のトニーもいる、父さんももうすぐ帰ってくるよね!」

そうつぶやくと、少年は立ち上がり、幼い弟トニーの待つ我が家へと向いました。
寄り添いながら家路を急ぐ少年とジェニー!
星の煌めく夜空からは、雪が舞い降りてきました。
どうやら、今年もホワイト・クリスマスになりそうです。

凍りつくような夜空の下を歩く痩せこけた少年ダニー、そして被毛が擦り切れ、白い飾毛が黄ばんで見すぼらしいジェニー!
それでも、少年とジェニーの心はとても温かで、二人の愛情に変わりはありませんでした。
少年は、雪の舞い散る夜空の星を見上げて囁きました。

「素敵な贈り物をありがとう、メリー・クリスマスお母さん!」

舞い散る雪はだんだん多くなり、地面を覆い尽くすほどになってきました。
そして、ジェニーの肩にも雪が降り積もり、黄ばんだ飾毛は、まるで手入れの行き届いたチャンピオン犬のように真っ白です。

セイント・ジェニー・オブ・ファーガソン!、彼女こそが本物のチャンピオン犬なのかも知れません・・・

作者/横山和明


ドッグ・ストーリー「母からの贈り物」を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
皆様が、いつまでもお幸せでありますように、心からお祈りいたしております。

メーリー・クリスマス!
       横山和明
     2010年12月
WishVeryMerryChristmas!


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